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2020.08.28
塗り絵で北斎

生誕260年の北斎に敬意を表し、というか面白いので北斎を塗り絵で楽しんでいます。
1枚の作品への色入れには3時間位かかりますが、江戸時代の姿、細かい表情や柄、北斎の視点、お茶目心、、、、が感じられます。浮世絵は観るものでなく読むものだと聞きましたが、線をなぞり色入れで、作者に思いを馳せるものになります。
本当に良い時間を過ごせます。作品が出来たものから順次載せていきます。


「凱風快晴」(がいふうかいせい)
凱風快晴

すみだ北斎美術館で買ってきた塗り絵の本、時間がある時にシコシコ色を入れてます。24色の色鉛筆も久しぶりに購入し、鉛筆削りで先をガリガリと尖らせたりして、楽しんでます。

浮世絵を見ると擦り色が異なるものがありすぎて、どれをお手本にしたら良いのか分からないのですが、自分なりの感覚で決められます。仕事じゃないし、趣味でも無いけど、北斎生誕260年を祝う気持ちです。

目は疲れるし、肩はこるけど、天才の視点や気持ちがなんとなく見えて来る数時間です。白い紙に何かを描く才能がないのはよく分かっているので、こんな事しか出来ませんが、少し北斎に近づいています。

この「凱風快晴」通称赤富士、冨嶽三十六景を代表する富士山ですが、単に色を入れているだけでも背筋が伸び、心が凛としてきます。自分の中にある日本人の富嶽信仰に気づかされます。



「山下白雨」(さんかはくう)
山下白雨

冨嶽三十六景の中で、凱風快晴、神奈川沖浪裏と並んで三役の評価を受けているこの「山下白雨」、これも頑張って塗りました。

白雨とはにわか雨のこと、下に見えるのが稲妻ですが、今日(8月12日)の午後文京区でも見られました。というか東京中雷雨だったと思います。本物の稲妻を見ながら、この絵に色入れしました。

しかし、これって飛行機から富士山をを見る視線。北斎ってどんな想像力を持っていたのでしょうか?そして観察力!凄いですね。

浮世絵は見るものではなく読むものだと教えて貰いました。じっと眺めているといろんなものな見えてきます。そしてこの様に時間をかけて色をつけていると、また違う発見があります。

まだ自分の中に創造力があったのだと教えて貰え、そして勇気を貰えるアートワーク?です。



「神奈川沖浪裏」(かながわおきなみうら)
神奈川沖浪裏

当時の西欧から見たら文字通りfar east、東の果ての果て、よく分からない神秘の島国の絵師が描く、爪立てて襲ってくる様に波を表現するこのセンス、一体頭の中はどうなってるんだろう?そんなことを思ったでしょうね。ドビュッシーがこの絵にインスピレーションを得て曲を作ったという有名な話もあります。

塗り絵ですから単にこれを絵付けしただけなのにとても疲れました。「凱風快晴」(赤富士)、「山下白雨」は富士山を思い出しながら気持ちよく描けたのに、、、

でもこれは子供の頃の海水浴、強い波に巻き込まれてころころ回転、鼻から塩水が入り辛かった思い出が蘇りました。浪裏という事で、波の裏側の色を一生懸命書きましたが、思わず力が入り右手がちょっと痛くなりました。色つけする前の白紙と見比べて、ちょっと達成感です。
「神奈川沖浪裏」のパワーは凄い、さすがGreat Wave!

これで「冨嶽三十六景」の“三役”は完成、一段落です。実は別の絵柄をあと2枚色入れしましたが、これに比べたら遥かに気が楽でした。塗り絵を楽しむのはそういうものが良いなぁと。つくづく感じます。疲れちゃいけない。

おまけ
これはどうも木更津沖からの景色らしいです。東京湾にこんな波が立つのは台風かな?とか、、、色々考えながらの時間でした。



「江戸日本橋」(えどにほんばし)
江戸日本橋

今でもそうですが日本橋は五街道の起点、日本の中心です。日本橋の真ん中に道標があるのはご存知かと思いますが、ここには河岸がありました。
関東大震災で中央市場が築地に移転し、一昨年豊洲に。時代の流れを感じますが、江戸時代の日本橋の賑わいは様々な浮世絵から読み取れます。

この絵に色つけしていても大いに色々学びました。建物の構造、屋根はこうなっているのか、船の様子、石垣の組み方、橋の上にひしめく色んな人の持ち物、服装、、、

当時の生活、人の気持ち、活気、そして川から立ち昇る匂い。都市の真ん中でも、化石燃料や電気が無い澄んだ空気、川にはどんな魚が泳いでいたのかな?今とは全く違っただろうなどと、想像しながらの塗り絵は本当に楽しいものです。

榮太棲さんに教えて貰った江戸菓子と京菓子の違い、河岸のお兄さん達が美味しい餡子を食べたいのだから、皮は限りなく薄くせいと言われて職人が必死に作った金鍔。刀の鍔だから丸いのであり、四角いのは金鍔ではなく、薄く丸く出来ない人の苦肉の作品とか。そんなことも頭をよぎりました。

実は日本橋は私が社会人スタートした時の勤務地、特別な思い入れがあります。日本橋もほぼ毎日渡りました。でも富士山は見えなかったなぁと思ったら、これは有り得ない構図で北斎のアーティスト感覚で描いたものだそうです。

でもそんなことどうでも良いです。日本橋、江戸城、富士山、この三点セットに色つけ出来て幸せでした。とても気楽に、楽しみながら色つけ出来ました。満足!



「尾州不二見原」(びしゆうふじみばら)
尾州不二見原

尾張国、名古屋ですね。冨嶽三十六景の中では一番西の場所から見た富士山の構図ですが、あり得ない景色だそうです。

富士山は見えないので他の山を富士と見たて、おまけに他の山を省略、あたかも遠景で見えるようにしちゃった。大きな丸い樽の中に、小さな三角の富士山が隠れている。なんとお茶目なのでしょうか。北斎からざまぁ見ろと言われてる気がします。

これの色つけは楽しかったです。この大樽は酒かな?味噌かな?醤油かな?と思うとその香りがしてくるんです。緑竹を編んで樽の周囲を縛るところを描いていると、その香りとトゲに注意しよう、とか思ってしまいます。

パッと見るとはあっと驚かされる、江戸時代にこの発想は、と奇抜な構図ですが、色つけをしていると本当に色々思い出します。

徳川美術館で観た「源氏物語絵巻」も凄かったなあと名古屋にも思いを馳せながらシコシコ色をつけた2時間でした。



「本所立川」(ほんじよたてかわ)
本所立川

本所は東京の下町、今は墨田区の南側、両国などに近い場所ですみだ北斎美術館もここにあります。北斎が長いこと住んだエリア。ちなみに彼は何十回も引越ししたそうですが、その理由が掃除が嫌いだったからとか?

この立川は隅田川に流れ込む川で、当時は水運を利用する材木問屋が沢山あったそうです。この絵はかなり誇張して材木を林立させてますが、このアングルや視点も北斎らしいと言われてます。木を切る職人、下からえいやっと木片を投げ上げ、受け取った職人がきっちり積み上げる、、、幾らなんでもいった高さですが(笑)、これも北斎らしいし彼が好んだ光景です。

そのお茶目さに付き合うのも楽しいですし、他の絵と同じように色んな発見や気づきがあります。専門家が見ると様々な視点がありますが、素人は楽しめば良いのです。色付け前の白絵(というのでしょうか?)と見比べると達成感があり、ちょっとほくそ笑み。(笑)

ちなみに現在立川がどこにあるのかといえば、上を首都高速小松川線が走っているんです。若い頃からぶんぶん飛ばし房総半島に行く時にお世話になった道路ですが、この絵を見てなんか反省というか、考えが無かったなぁと思います。日本橋の上の高速と同じ、あの頃は誰も反対しなかった、、、今となっては悔やむばかり。生誕260年、渡辺でなくとも注目する人は沢山です。でも塗り絵にはまる奴は少ないかも。



「甲州三坂水面」(こうしゅうみさかすいめん)
甲州三坂水面

河口湖に映る富士山、裏富士ですね。これも専門家の解説を読むと大変面白く、北斎らしさがここにも現れてます。先ずリアル富士山は夏山なのに、湖面の逆さ富士は雪がある冬山、映る場所もめちゃずれているし、素人でもあり得ないという構図なんですって。

そっか、と思いながら色をつけると一昨年の家族旅行を思い出しました。中央道からの御坂峠ルートで河口湖に。今はトンネルになっているので風情のある峠道は通らず、シャッと一気に着いてしまうのです。泊まったのは星野リゾートのグランピング。綺麗で素敵ですがちょっと自分の趣味ではなかったです。でもこれは星野さんが悪いのではなく、好みと価値観だからまぁしょうがない。そんな事を思い出しながら河口湖に色を入れました。

そして突然、学生時代にラリーで走り回ったことを思い出しました。ナビゲーターとして助手席で計算と方向指示役の初ラリーがここ、夜中ここら辺をぐるぐる回ったのですが、明け方のゴール地点、山道をぐんぐん登っていきパッと視界が開けたら、そこにどーんと富士山が!おおっとしたあの感動をこの絵が思い出させてくれました。

「凱風快晴」や「山下白雨」の富士山では思い出さなかったのに、不思議です。

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