<GILLIE>株式会社ギリー
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「ブルゴーニュワインを聞く」

<ご報告>


今回の実施レポートに引き続き、「ブルゴーニュワインを飲む会」を実施しますので、会員の皆様とはその場で飲みながら、認識と理解、そして楽しみ方を深めていきましょう。

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BBRに5名いらっしゃるマスターオブワインの一人、ジャスパー・モリスが来日するとの話を聞き、ぜひ話を聞かせて欲しいと依頼しました。彼はブルゴーニュの専門家、ジャスパーさんがいるからこそBBRのブルゴーニュワインが大変評価されている存在です。

プロのソムリエや流通関係者、専門誌の記者など、本当に詳しい人と交流している彼の貴重な時間をもらい、特別に「超・初心者向け」の内容でインタビューさせて頂きました。

この日は事前にランチも一緒させて頂き、昨年ロンドンのBBR訪問した時の話、サントリー時代にフランスのシャトーを何回も訪問した事、冬のワイナリーで葡萄の枝選定会をした事などを話し、ギリークラブの姿勢や活動に興味をお持ち頂いた上で、インタビューをさせて頂きました。

一つ一つの本当に初歩的な質問に丁寧に答えて頂き、ジャスパーさんの誠実なお人柄がよくわかるインタビューになりました。以下工藤史歩さんのレポートです。初心者にとって、本当によく理解できる内容になっています。

もちろんこれによって、増々興味が増すと思いますので、今後は実際に「ブルゴーニュを飲む会」に繋げて行きます。やっぱり飲まなくちゃね。

そして・・・レポートにはありませんが、ジャスパーさんにお願いしました。

「ブルゴーニュを案内してくれますか?

「もちろん!自分はブルゴーニュに住んでいるので、ぜひ来てくれ。素晴らしいドメーヌを案内する」

これを“真に受けて”しまいました。

実現させますよ!ぜひご一緒しましょう。

渡辺幸裕

先ごろ、東京・丸の内のベリー・ブラザーズ&ラッド社で、同社バーガンディー・ディレクターのジャスパー・モリス氏による公開インタビューが行われました。

テーマは「超・初心者のためのブルゴーニュ」。

ジャスパー・モリス氏は、ブルゴーニュワインにおいて世界でトップクラスと称される専門家です。英国で、5世代続く弁護士の家庭に生まれます。オックスフォード大学を卒業後、ブルゴーニュワインに魅せられ、また世の中の趨勢がボルドーからブルゴーニュへ移りつつあることをみて、ブルゴーニュワインに特化したワイン専門輸入会社を設立。1985年に英国のワインの資格の最高峰といわれる「マスター・オブ・ワイン」を取得します。

2003年にベリー・ブラザーズ&ラッド社による会社買収で、同社に入社。ワインに関する膨大な知識と卓越したテイスティング能力により、これまでボルドーに強かった同社を、過去4年間で3回にわたり「インターナショナル・ワイン・チャレンジ・バーガンディ・スペシャリスト・マーチャント」を受賞するまでに導くのに大きく貢献しました。

現在、世界中に流通するベリー・ブラザーズ&ラッド社のブルゴーニュワインのすべての買い付けを一手に担っています。

2010年11月には、これまでの30年にわたる活動の集大成である「インサイド・バーガンディ」(全656ページ・7000円)を出版。執筆に2年を費やしたというこの大作は、ワイン界で大きな注目を集めて、初版5000部はすぐに完売。近いうちに日本語版も発売される可能性があります。

ふだんはプロ中のプロの世界で活躍するジャスパー・モリス氏が、超・初心者に向けて、ブルゴーニュワインの魅力を、かみ砕いてかみ砕いて講義するという今回の企画。インタビュアーは渡辺幸裕さんです。

以下、一問一答を収録形式でどうぞ。

 ヴィニョロンとは何でしょうか。

 ヴィニョロンとは、畑づくりからブドウの栽培、収穫、ワイン造りまで一貫して関わるワインのプロデューサーのこと。収穫したブドウからワインを造るワインメーカーとは違います。


 ブルゴーニュワインといえば、初心者としては白がシャルドネ、赤がピノ・ノワールという単一品種のワインだと理解していますが、その理解は正しいのでしょうか。

 ほぼそう言えます。97%はそう思っていいのですが、1〜3%ほどの例外はあります。けれども一般的に、白はシャルドネ、赤はピノ・ノワールと理解すればよいでしょう。


 ブルゴーニュワインのボトルは、下半身がどっしりしたシェイプのものという理解でよろしいのでしょうか。

 ブルゴーニュワイン、イコール、下半身がふくらんだシェイプのボトルに入っています。けれども逆、すなわち下半身がふくらんだシェイプのボトルに入っているもの、イコール、ブルゴーニュワインとはいえません。世界のさまざまな産地で、ブルゴーニュ型のボトルが使われています。


 ブルゴーニュの白ワイン、つまりシャルドネには他の地区のワインと異なるどのような特徴があるのでしょうか。

 ブルゴーニュのシャルドネは、オーストラリアやニュージーランドなどニューワールドのワインとは異なる特徴があります。ブルゴーニュのシャルドネは、それぞれの作り手や畑の場所によるアロマーアロマとは香りのことではなく、芳醇なテクスチャー、フルボディといわれるしっかりした骨格があり、酸味を含んでいます。


 フランスの白ワインのブドウといえば、初心者はまず「ソーヴィニョン・ブラン」と「シャルドネ」のふたつを覚えます。フランスのシャルドネは新世界のシャルドネとは違うということですが、それではフランス(ボルドー)のソーヴィニョン・ブランとフランス(ブルゴーニュ)のシャルドネは、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

 ソーヴィニョン・ブランは、グズベリー(西洋すぐり)やカシス、非常に酸味の高い。非常に限られるため、わかりやすい味といえる。

シャルドネは、ソーヴィニョン・ブランに比べて味わいの幅が広く、テクスチャーによってさまざまな味わいがある。

そういった意味で、ソーヴィニョン・ブランはステンレスタンク、シャルドネは樽熟成に適しているといえます。


 つまり、ブルゴーニュは作り手がどんな樽を使い、どの畑でブドウを収穫するかなど、さまざまな条件によって幅広い個性を持ったワインがあるということですね。

 そうです。ですが、とりわけブルゴーニュワインの個性をかたちづくるのは、特にブドウが育つ土地だと言えます。まず、土地の個性があり、その次にはたけの特徴が顕れます。


 畑の話が出たのでお聞きします。ブルゴーニュのドメーヌとボルドーのシャトーの畑は、大きさもその特徴も、まったく異なると思います。その違いはどう理解すればよろしいのでしょうか。

 いちばん大きな違いは、その土地の特徴にあります。

ボルドーは、水に囲まれて古くから交易が発達していました。そのため商業が発展し、各シャトーのブランドも確立されました。

また、商業的に成長したため、ボルドーのシャトーは会社組織化され、細分化されることなく現在に至っています。

一方、ブルゴーニュは内陸で、商業的な発展はせず、むしろ作り手による職人気質が発達しました。

また、フランスの相続法も原因となり、小さな畑をより細分化して相続したため、ワインの作り手は極めて小さな畑を、あちこちに飛び地として持つことになりました。

今でも、ひとりのワインの作り手がつくるワインが、すべて同じ画一的な味にならず、飛び地ごとにそれぞれの味わいを持つのは、それが理由です。


 つまり作り手は、そもそも画一的なものを造ろうという意識がないわけですね(笑)。だからブルゴーニュは初心者にとって難しいのです。

 その通りです・・・! ブルゴーニュは商業エリアではなく農家の集合体なので、市場に受け入れられることより、自分たちがやりたいことをやるんです(笑)。


 ですから我々初心者は、ジャスパーさんのような専門家に導いていただくことが必要なわけですね。

 そうですね。飲み手によってはすべてを掘り下げて知悉しなければ気が済まない人もいるでしょう。

けれども、ひとつこんな方法があります。

たとえば、ブルゴーニュの白を知るにあたって、特に典型的ではっきりとした個性を持つ「シャブリ」「ムルソー」「プィィ・フュッセ」を飲み分けてみるという方法です。

そのなかで、たとえば「シャブリ」がもっとも好きだったとします。

次に「シャブリ」を飲み分けるという楽しみがあります。シャブリの中でも「地域名ワイン」「村名ワイン」「プルミエ・クリュ」「グラン・クリュ」という選択肢があります。

次に、シャブリの中では予算との兼ね合いなども考えると「プルミエ・クリュ」があなたに合っているとします。そうしたら、次は「シャブリ」の「プルミエ・クリュ」を掘り下げていきます。

プルミエ・クリュには畑名がついていますので、いくつか飲み比べるうちに、たとえば「モンマン」が好きだと思ったとします。

次に、ワインショップに足を運んでください。「シャブリ」の「プルミエ・クリュ」の「モンマン」にも、さまざまな作り手がいることがわかるはずです。今度は、それを飲み分けていきます。

この4ステップを経ることで、「ブルゴーニュの白ワインがわからない」という段階から、「シャブリのプルミエ・クリュのモンマンの誰それのワインが好み」ということがわかるようになります。

そして仲間とワインを何本か開けるときは、同じものではなく、さまざまな種類を飲み分けることをおすすめします。ワイン選びに正解があるわけではなく、さまざまなワインを味わうことで、好みのワインを見つけられます。


 次は赤ワインについて教えてください。カベルネ・ソーヴィニョンやメルローと比べて、ブルゴーニュワインの特徴であるピノ・ノワールは、どんな味わいを理解すればいいのでしょうか。

 ひとつだけ、赤ワインの味わいを決定づける大きな決め手は「ブドウの皮」です。

赤ワインの特徴である色、香り、渋味は皮に由来します。
ピノ・ノワールは赤ワインのブドウの中で、もっとも皮が薄いのが最大の特徴があります。そのため、色は薄く、味は渋味が少なくなります。

また、皮が薄くとてもデリケートなブドウなので、繊細に扱うことが必要です。
繊細なピノ・ノワールですが、香りは長く持続します。

また、味わいも、ボルドーが力強く渋味が強いのに対して、ピノ・ノワールは渋味も少なくやさしい飲み心地なのですが、余韻が長く続きます。

ボルドーは黒いフルーツ(カシスやブラックベリー)、ピノ・ノワールは赤いフルーツ(ストロベリーやラズベリー)をイメージするとわかりやすいです。


 ボルドーは、カべルネ・ソーヴィニョンやメルロー、カべルネ・フランなどのブレンドにより、各シャトーで個性的なワインを醸造します。一方、ブルゴーニュはほぼピノ・ノワールだけ。単一品種なのに、これほどさまざまな味わいのワインができる理由は、畑と作り手による違いだけなのでしょうか。

 ブドウ畑の向きや日照時間、丘の上か下か、地質は粘土質か砂利か、それが違うだけで味わいに違いが出ます。

ピノ・ノワールは繊細なブドウなので、育つ土地の影響を受けやすいのです。

また、ボルドーのようにブレンドをしないため、ブドウの味をよりはっきり味わいわけることができます。


 超・初心者にとっては、ブルゴーニュワインはテーブルワインから「ロマネ・コンティ」まであるわけで(笑)、それがまったく同じ品種のブドウからできているのに、これだけ価格差がつくのはなぜなのかと思ってしまうわけです。


 確かに(笑)。私はブルゴーニュに住んでいましたが、ロマネ・コンティの畑とその隣りの畑に、どうしてそれほどの差があるのか、実際に住んでみてもわかりませんでした(笑)。

人々がよりよいものに対して大金を支払うといったビジネス的な理由から、大きな価格差が生じています。


 ここで少し話は変わりますが、ここに2058年のワインシェアを予測する「フューチャー・オブ・ワインレポート」があります。これはベリー・ブラザーズ&ラッド社のウェブサイトにも掲載されているものです。

これを見ると、2058年にはワインの価格は大きく上昇すると予測されています。

ボルドーのシャトーの価格が跳ね上がるのは理解できるのですが、ブルゴーニュは買い占めできないほど小さな作り手のものも多いです。

ブルゴーニュのほうが、まだボルドーより上がり幅は小さいと見ていていいのでしょうか。

 投機をするには有る程度の投機分析が必要です。ボルドーはシャトーやヴィンテージから分析をしやすいのですが、ブルゴーニュは畑が小さく複雑で、分析の法則に当てはまる要素は少ないといえます。

また、数字的にいってもボルドーのたとえばシャトー・オー・ブリオンは、年間24万本のワインを生産します。一方ブルゴーニュの有名な作り手でも樽3つ、本数にして年間約900本です。

1本当たりの価格がブルゴーニュとボルドーで同じくらい上昇したとしても、それによって受ける経済的影響の大きさが、ブルゴーニュとボルドーではまったく違います。

とはいえ、これはあくまでも現状の話です。この先、中国のワイン市場がブルゴーニュのドメーヌを正しく理解して評価するようになれば、とりわけグラン・クリュのブルゴーニュワインは、大きく値上がりすると予想されます。

一方、これはレポートにも書きましたが、中国はワインの産地としても成長しようとしています。中国がワインの生産国になれば、自国のワインを消費するため、ブルゴーニュワインの上がり幅にブレーキがかかるでしょう。

けれども、中国がワインの生産をやめて、これまでのように消費に集中するのであれば、大きく値上がりすると見て間違いありません。


 先日ブルゴーニュのワインのプリムールが行われました。生産量の少ないブルゴーニュですが、いま買っておいたほうがよいのでしょうか。

 ボルドーとブルゴーニュのプリムールについて、まず知っていただきたいことがあります。ボルドーは作り手であるシャトーの先導により行われます。一方、ブルゴーニュは作り手が行うのではなく、私たち英国のワイン商が仕掛けているのです。

また、ボルドーは投機商品として、価格の発表や決定などさまざまな駆け引きが行われるため、期間が長引きます。一方、ブルゴーニュは同時期にすべてのワインの価格が出揃い、購入する人はすべてを見比べて選ぶことができます。ここは大きな違いです。

ボルドーは、早く買って値上がりを待つという投機的な意味合いが強いのですが、ブルゴーニュは、よいワインを確実に買うためにプリムールを行うとご理解ください。

ちなみに2009年のワインは、とてもよいワインです。

いま飲んでもおいしいのですが、この先の熟成に期待できます。


 それでは最後に「ベリーズ・オウン・セレクション」について教えてください。

 「ベリーズ・オウン・セレクション」は、「その土地土地の特徴が非常によく出た、典型的なワインを提供する」ことをコンセプトにしています。

「典型的なワイン」を「買いやすい価格で」「すぐに飲める最良の状態」で提供するという3つの条件を満たしたものを「ベリーズ・オウン・セレクション」として販売しています。

ベーシックラインとしては「ブルゴーニュ白」「シャブリ」「エクストラ・クラスのブルゴーニュ赤」があります。

リザーブラインには典型的な村名ワイン、白は「ムルソー」「シャサーニュ・モンラッシェ」「ピュリニー・モンラッシェ」の3種類、赤は「ニュイ・ サン・ジョルジュ」「ジュヴレ・シャンベルタン」それからプルミエ・クリュの「ボーヌ」の3種類です。

ベリー・ブラザーズ&ラッド社では、造りたい味を示して、場合によってはブレンドなどをしながら味見を繰り返し、作り手とともにこれらのワインを造っています。

これらすべてを飲み比べるなら、飲む順番としては、
「シャブリ」「ブルゴーニュ白」「シャサーニュ・モンラッシェ」「ピュリニー・モンラッシェ」「ムルソー」

赤は、「エクストラ・クラスのブルゴーニュ赤」「プルミエ・クリュの「ボーヌ」「ニュイ・ サン・ジョルジュ」「ジュヴレ・シャンベルタン」がよいでしょう。

ボルドーのワインなどを入れるとあまりにも違いすぎて繊細な味わいがわかりづらくなるので、ブルゴーニュだけで飲み比べるのがおすすめです。


 違う観点からお聞きしますが、ニューワールドのピノ・ノワールでおすすめ、またシャルドネのおすすめはどちらでしょうか。

 ピノ・ノワールはニュージーランド、アメリカ西海岸がよいでしょう。シャルドネはもう少し幅広く、オーストラリア、カリフォルニアなどもよいと思います。